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憲法審査会、月内見送り 怠慢国会 遠い改憲議論
産経新聞 10月21日(金)7時55分配信
自民党の高村正彦副総裁、民主党の枝野幸男幹事長(当時)らが会派を代表して意見を表明した衆院憲法審査会。この後、審査会では実質的な審査が行われていない=平成27年6月11日、国会内(酒巻俊介撮影)(写真:産経新聞)
■譲る自民 拒む民進 異論の公明
今国会で憲法改正に向けた議論の本格化が期待された衆院憲法審査会が、「入り口」でつまずいている。与野党協調を重視する自民党は審査会での議論を否定しない民進党に譲歩して妥協を重ねたが、民進党は進め方をめぐり結果的に審査入りを拒否した。最後の実質的な審査から約1年5カ月、改憲議論ができない異常事態が続く。(田中一世、山本雄史)
◆最後は1年5カ月前
「筆頭間で合意したことが与党にひっくり返された。これでは幹事懇談会は受けられない」。衆院憲法審の野党筆頭幹事を務める民進党の武正公一氏は20日、与党筆頭幹事の中谷元氏(自民)との協議後、記者団を前に語気を強めた。同日の幹事懇談会が見送られた原因は、立憲主義などをテーマに参考人質疑を行うとした合意を公明党の反発でほごにされたからだ。
自民党は憲法審再開に向けて与野党協調を最優先し、野党に譲歩してきた。党憲法改正推進本部の保岡興治本部長ら幹部は20日、党本部で今後の対応を協議し、野党に配慮して「静かな環境」で改憲議論を進める方針を確認。保岡氏は民進党が撤回を求める平成24年策定の自民党憲法改正草案にこだわらない姿勢も示すが、現時点で民進党には響いていない。
また、与党内の調整不足が審査入り直前で障害となった。公明党が自民、民進両党間の合意事項に異を唱えたのは、立憲主義をテーマに議論に入れば民進党が昨年の安全保障関連法の議論のように政府・与党を「立憲主義を軽視している」と批判するのが確実とみられるからだ。「今後の改憲議論も昨年の二の舞いになる」との危惧も根強い。
だが、審査会の先送りは「優先順位が高いのは憲法改正ではない」(蓮舫代表)とする民進党には「渡りに船」だ。改憲議論は、護憲派と改憲派を抱える同党の「鬼門」。党憲法調査会は、綱領に明記した「未来志向の憲法」の構想に向けた具体的な議論を進める気配に乏しい。
公明党幹部は「幹事懇で進め方を議論すればいいのに民進党が嫌がっている」とする。「解散も近いとされ、憲法の議論を前に進めると、共闘する共産党と割れてしまうからではないか」というのが理由だ。
一方、国会は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)承認案などをめぐる山本有二農林水産相の「強行採決」発言で紛糾。民進党は20日、他の委員会も含め新たな審議日程の交渉に入らないよう指示しており、憲法審での審査はさらに遠のく。
◆衆参3分の2超は確保
各党に事情があるとはいえ、約2カ月の会期しかない今国会で1カ月たっても議論に入れないのは事実。7月の参院選の結果、「改憲勢力」が衆参両院で3分の2以上を確保し、改憲に向けた環境は整っている。
安倍晋三首相は「まずは憲法審査会で静かに議論し、各党の考えを示した上で国民的議論につなげていくことが必要だ」と期待するが、当の国会は怠慢ぶりが際立っている。