憲法改正国民投票法案
2001.11.16
超党派の憲法調査推進議員連盟総会で、憲法改正のための手続きを定めた「国民投票法案」と「国会法改正案」をまとめる。議員立法で02年の通常国会への提出を目指す。
2001.12.19
自民党憲法調査会(葉梨信行会長)が、憲法調査推進議員連盟がまとめた憲法改正国民投票法案と国会法改正案を了承。
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憲法改正国民投票法案憲法調査推進議員連盟
憲法調査推進議員連盟役員
二〇〇一年十一月十六日現在
会長 中山太郎(自民)
副会長 林 義郎(自民) 北澤 俊美(民主)
小川勝也(民主) 野田 毅(保守)
扇 千景(保守) 粟屋 敏信(無)
最高顧問 中曽根康弘(自民) 羽田 孜(民主)
海部 俊樹(保守)
顧問 葉梨 信行(自民) 高鳥 修(自民)
片山虎之助(自民) 鹿野 道彦(民主)
坂口 力(公明) 神崎 武法(公明)
太田 昭宏(公明) 藤井 裕久(自由)
幹事長 谷川 和穂(自民)
幹事長代理 町村 信孝(自民)
事務総長 伊藤 英成(民主)
事務局次長 武見 敬三(自民) 泉 信也(保守)
松沢 成文(民主)
会計 愛知 治郎(自民)
役員 尾辻 秀久(自民) 谷川 秀善(自民)
吉田 公一(民主)
憲法改正国民投票法案提出理由
憲法第九六条は、憲法改正手続きの一環として、国民投票が行われることを規定しており、そして、この憲法改正の国民投票を実施するには、その具体的手続を定めた法律が必要となる。しかるに、このような国民投票実施のための法律は、憲法制定後半世紀以上経った現在に至るまで、制定されていない。
そもそも、唯一の立法機関たる国会は、憲法に規定されている事柄を実行するのに必要となる法律を制定すべき義務を負っている。もとより、このような義務はいわゆる政治的な義務という性格のものではあろう。しかし、憲法が、改正手続を定め、必要に応じて憲法改正が行なわれ、迅速に時代の変化に対応しうることを期しているにもかかわらず、その改正を実行するための立法措置を国会がとらないのは、憲法改正手続を定めた憲法第九六条の趣旨から導かれる国会の立法義務に違反する「不作為」とでもいうべき状態にあると言わざるを得ない。
よって、憲法改正国民投票の実施に関する法律を制定することによって、憲法改正の必要が生じた場合に迅速に対応しうるための法整備を早急に行い、上記のような「立法の不作為状態」の解消を図る必要があると考えるものである。
(以下、要綱の後にある※印の解説は憲法調査推進議員連盟が付したものです)
国会法の一部を改正する法律案要綱
第一 日本国憲法改正案の発議(原案の提出)
議員が日本国憲法の改正案(原案)を発議(提出)するには、衆議院においては議員一〇〇人以上、参議院においては議員五〇人以上の賛成を要するものとすること。
※内閣の提出権の有無について・・・現行法上、内閣に日本国憲法改正案の原案の提出権を認める明文の規定がないため、内閣の提出権を認める立場に立つ場合であっても、それは内閣法等の解釈・改正等により対応すればよいと思われるので、本案(国会法改正)では内閣の提出権の有無には触れず、国会議員が提出する場合についてのみ規定することとした。
第二 委員会の審査
日本国憲法改正案の審査については、
- 公聴会の開催を義務づけるものとすること。
- 委員会の審査省略に関する規定は適用しないものとすること。
- 委員会による議案の廃案に関する規定は適用しないものとすること。
- 中間報告の規定は適用しないものとすること。
第三 両院協議会
日本国憲法改正案について両院の意思が異なった場合、両院協議会を設けるものとすること。
第四 日本国憲法改正の発議及び国民に対する提案
日本国憲法改正案について国会において最後の可決があった場合には、その可決をもって、国会が日本国憲法第九六条第一項の規定による日本国憲法の改正の発議をし、かつ、同項の承認を求めるために国民に提案したものとすること。
第五 その他
この法律は、 から施行すること。
日本国憲法改正国民投票法案要綱
第一 総則
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趣旨
日本国憲法の改正についての国民の承認の投票(以下「国民投票」という。)については、この法律の定めるところによるものとすること。
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国民投票に関する事務の管理
国民投票に関する事務は、中央選挙管理会が管理するものとすること。
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国民投票に関する啓発、周知等
総理大臣、中央選挙管理会並びに都道府県及び市町村の選挙管理委員会は、国民投票に際しては、あらゆる機会を通じて、国民投票の方法その他国民投票に関し必要と認める事項を投票人に周知させなければならないものとすること。
第二 国民投票の投票権
国民投票の投票権を有する者は、国政選挙の選挙権を有する者のほか、選挙犯罪により公職選挙法上公民権を停止されている者とすること。ただし、この法律に規定する罪により禁錮以上の刑に処せられた者は、投票権を有しないものとすること。
※国民投票の投票権は、国政選挙の選挙権を有する者に与えられることを原則とした。
しかし、国政選挙の選挙権を有しない者(公選法十一条一項、二項)であっても、選挙犯罪により公選法上公民権を停止されている者(同条一項五号、同条二項、二五二条)は、選挙のルールを破った者として公職の選挙についての選挙権を否定される理由はあるものの、憲法改正の投票権までも否定する理由に乏しいと考えられる。よって、本法案では、このような者についても、投票権を与えることとした。ただし、このように選挙のルールを破った者が、国民投票に関して他人に働きかける行動をすることを認めるべきではない。そこで、これらの者は国民投票運動をすることはできないこととしている。(第十一の四)。
一方、この法律に規定する罪(国民投票運動の規制に違反する罪等)により処罰されたものは、国民投票制度のルールに違反した者として、一定期間、国民投票の投票権を認めないこととした。なお、第十一の四参照。
第三 投票人名簿及び在外投票人名簿
- 市町村の選挙管理委員会は、国民投票が行われる場合においては、投票人名簿及び在外投票人名簿を調製しなければならないものとすること。
- 投票人名簿の被登録資格としては、公職選挙法上の選挙人名簿とは異なり、引き続き三箇月以上当該市町村に居住していることは要件としないものとすること。
第四 国民投票の期日等
- 国民投票は、国会が憲法改正を発議した日から起算して六〇日以後九〇日以内 において内閣が定める期日に行うものとすること。ただし、国政選挙の期日その他の特定の期日に行う旨の国会の議決がある場合には、当該期日に行うものとすること。
- 内閣は、少なくとも国民投票の期日の二〇日(衆議院議員の総選挙の期日に行う場合にあっては一二日、参議院議員の通常選挙の期日に行う場合にあっては一七日)前に、国民投票の期日及び内閣に送付された憲法改正案を官報で告示しなければならないものとすること。
※国民投票の期日を憲法改正の発議後何日以内にするか、また、告示をいつまでに行うかは、周知期間をどの程度とるべきかという判断とリンクしている。
国民に憲法改正についての周知を徹底させるためには、十分な期間が必要であるが、あまり、期間が長いと逆に関心が薄れるおそれもある。そこで、本法案では、両方の要請の調和点として上記の日数を設定した。
ちなみに、昭和二十八年の自治庁案では、発議後三五〜九〇日の間に国民投票を行い、投票期日の二五日以前に告示を行うこととなっていた。
第五 投票及び開票
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一人一票
国民投票は一人一票に限るものとすること。
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投票管理者及び投票立会人
投票管理者及び投票立会人に関し、必要な規定を置くものとすること。
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投票用紙の様式
投票用紙には、憲法改正に対する賛成又は反対の意思を表示する記号を記載する欄を設けるとともに、憲法改正案を掲載しなければならないものとすること。
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投票の方式
投票人は、投票所のおいて、憲法改正に対し賛成するときは投票用紙の記載欄に○の記号を、憲法改正に対し反対するときは投票用紙の記号欄に×の記号を、自ら記載して、これを投票箱に入れなければならないものとすること。
※憲法改正の内容が複数の事項にわたる場合、一部に賛成で、一部に反対という意思表示の方法を認める必要があるのではないかが問題になる。しかし、そのような場合は、国会が改正案を発議する際に、改正の対象となる各々の事項ごとに発議を行えば、各事項に係る発議に対応して投票を行うことになるので、一部賛成、一部反対の票を投じることと同じ結果が得られるのではないか。
すなわち、この問題は、国会の発議の方法を工夫することによって解決できると思われる(国会法の一部を改正する法律案要綱参照)
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開票管理者及び開票立会人
開票管理者及び開票立会人に関し、必要な規定を置くものとすること。
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投票及び開票に関するその他の事項
この法律に規定するもののほか、国民投票の投票及び開票に関しては、衆議院比例代表選挙の投票及び開票に関する規定の例によるものとすること。
第六 国民投票分会及び国民投票会
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国民投票分会及び国民投票会
国民投票分会及び国民投票会について必要な規定を置くものとすること。
※国民投票分会、国民投票会は、国政選挙における選挙分会、選挙会に対応するもので、次のような事務を行う。
国民投票分会・・・都道府県ごとに置かれ、その都道府県内の開票が終了した段階で開票結果の報告を調査し、その結果を国民投票長(国民投票会の長のこと。)に報告する。
国民投票会・・・全国に一つ置かれ、各都道府県の国民投票分会長からの報告を調査し、その結果を中央選挙管理会に報告する。
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国民投票の結果の告示等
中央選挙管理会は、国民投票の結果の報告を受けたときは、有効投票総数、賛成投票数及び反対投票数並びに賛成投票数が有効投票総数の二分の一を超える旨又は超えない旨を官報で告示するとともに、総務大臣を通じ内閣総理大臣に通知しなければならないものとすること。
第七 国民投票の効果
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国民の承認
国民投票の結果、憲法改正に対する賛成投票の数が有効投票総数の二分の一を超える場合は、当該憲法改正について国民の承認があったものとすること。
※憲法改正の効果の要件として、憲法第九六条は「(国民)投票においてその過半数の賛成を必要とする」と定めるが、「過半数」の意味として、本案のように、
- 有効投票総数の過半数が賛成である場合とする考えのほか、
- 投票総数の過半数が賛成である場合とする考え、
- 有権者総数の過半数が賛成である場合とする考え、
等があるが、棄権票や無効票を一律に反対票と同視するのは適切でないので、有効投票数の過半数が賛成であることを憲法改正の効果発生要件としている。
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憲法改正の公布
内閣総理大臣は、中央選挙管理会より、憲法改正に対する賛成投票の数が有効投票総数の二分の一を超える旨の通知を受けたときは、直ちに当該憲法改正の公布の手続きを執らなければならないものとすること。
第八 訴訟
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訴訟の提起
国民投票の効力に関し異議があるときは、投票人は、中央選挙管理会を被告として、中央選挙管理会が国民投票の結果を告示した日から起算して三〇日以内に、東京高等裁判所に訴訟を提起することができるものとすること。
※投票、開票等に違法があったと考える者が国民投票の効力を争うため出訴する手段として、このような訴訟を認めている。この訴訟は東京高等裁判所の専属管轄であり、二審制とした。
早期に訴訟の結果を確定する必要があることから、出訴期間を国民投票の結果が確定してから三〇日以内に限定した。
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無効判決
一による訴訟の提起があった場合において、国民投票に関する規定に違反することがあるときは、国民投票の結果に異動を及ぼすおそれがある場合に限り、裁判所は、その国民投票の全部又は一部の無効の判決をしなければならないものとすること。
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裁判所の処理に係る原則
一による訴訟については、裁判所は、他の一切の訴訟に優先して、速やかにその裁判をしなければならないものとすること。
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訴訟の提起が投票の効果に与える影響
一による訴訟が提起されても、その判決が確定するまでは、国民投票の効果に影響を及ぼさないものとすること。
第九 再投票及び更正決定
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再投票
第八の一による訴訟の結果、国民投票の全部又は一部が無効となった場合においては、二に該当する場合を除いて、更に国民投票を行わなければならないものとすること。
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更正決定
第八の一による訴訟の結果、国民投票の全部又は一部が無効になったときに、更に国民投票を行わないで国民投票の結果を定めることができる場合においては、国民投票会を開き、これを定めなければならないものとすること。
第十 国民投票に関する周知
都道府県の選挙管理委員会は、政令で定めるところにより、憲法改正案、投票用紙の見本その他国民投票に関し参考となるべき事項を掲載した国民投票公報を発行しなければならないものとすること。
第十一 国民投票運動に関する規制
※本法案では、国民投票に関する運動については、基本的に自由であるという原則の下に、公務員のように、立場上、公正であることが求められる者の行為、国民に多大な影響を与えるマスコミによる虚偽報道等の不当な行為等についてのみ、公選法にならった規制を設けている。
しかし、国民投票に関する運動は、公選法の選挙運動のように運動期間が明確に限られているわけでないこと等から、規制の範囲が必ずしも明確ではない。また、規制に違反した場合は罰則が適用されることが想定されるので、罪刑法定主義の要請を満たす必要もある。そこで、規制される運動の範囲をある程度明確にするよう、今後、検討する必要がある。
なお、未成年者使用の国民投票運動の規制の是非についても論議があるが、国民投票に関する運動は基本的に自由とするという原則から、規制を設けないこととした。
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特定公務員等の国民投票運動の禁止
- 中央選挙管理会の委員等、選挙管理委員会の委員及び職員、裁判官、検察官、警察官等は、在職中、国民投票に関し憲法改正に対し賛成又は反対の投票をさせる目的をもってする運動(以下「国民投票運動」という。)をすることができないものとすること。
- 国民投票の投票管理者、開票管理者、国民投票分会長及び国民投票長は、在職中、その関係区域内において、国民投票運動をすることができないものとすること。
- 不在者投票管理者は、不在者投票に関し、その者の業務上の地位を利用して国民投票運動をすることができないものとすること。
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公務員等及び教育者の地位利用による国民投票運動の禁止
国又は地方公共団体の公務員等及び教育者(学校教育法に規定する学校の長及び教員をいう。)は、その地位を利用して国民投票運動をすることができないものとすること。
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外国人の国民投票運動の禁止等
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外国人は、国民投票運動をすることができないものとすること。
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外国人、外国法人等は、国民投票運動に関し、寄附をしてはならず、何人も、国民投票運動に関し、外国人、外国法人等から寄附を受けてはならないものとすること。
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何人も、国民投票運動の関し、外国人、外国法人等に対し、寄附を要求し、又はその周旋若しくは勧誘をしてはならないものとすること。
※本法案では、憲法改正は主権者たる日本国民の自主的な判断に基づいて判断されるべきという考えに立って、外国人の国民投票運動を禁止した。
しかし、上記のように、禁止されるべき国民投票運動の外延が必ずしも明確 でないことを考えると、外国人に国民投票運動の一切を認めないことは、現在の国際化した社会において、過度の規制となるおそれがないか更に検討する必要がある。
ちなみに、昭和二八年の自治庁案では、この案と同様の規制がなされている。
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国民投票に関する罪を犯した者等の国民投票運動の禁止
この法律に規定する罪により刑に処せられ国民投票の投票権を有しない者及び公職選挙法上公民権を停止されている者は、国民投票運動をすることができないものとすること。
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予想投票の公表の禁止
何人も、国民投票に関し、その結果を予想する投票の経過又は結果を公表してはならないものとすること。
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新聞又は雑誌の虚偽報道等の禁止
新聞紙(これに類する通信類を含む。以下同じ。)又は雑誌は、国民投票に関する報道及び評論において、虚偽の事項を記載し、又は事実をゆがめて記載する等表現の自由を濫用して国民投票の公正を害してはならないものとすること。
※ この規定は、新聞紙、雑誌等が国民投票に関して虚偽の報道を行うことを禁止したものである。例えば、憲法を改正した場合あるいは改正しなかった場合に、どのような事態が生じるかについて予想を記載するような行為は、一般的には、虚偽の報道に当たらない。
※ 本案では、マスコミに対する規制は、公選法に規定されているもののうち、虚偽報道の禁止及びマスコミを買収して報道を行わせる行為等の禁止について規定するだけである。表現の自由の尊重の要請がある一方で、マスコミの影響力の大きさを考慮しつつ、マスコミの報道に対してどこまで規制を行うべきかの議論が更に必要である。
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新聞紙又は雑誌の不法利用等の制限
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何人も、国民投票の結果に影響を及ぼす目的をもって、新聞紙又は雑誌の編集その他経営を担当する者に対し、財産上の利益の供与等を行って、当該新聞紙または雑誌に国民投票に関する報道および評論を掲載させることができないものとすること。
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新聞紙又は雑誌の編集その他経営を担当する者は、財産上の利益の供与を受けること等によって、当該新聞紙又は雑誌に国民投票に関する報道及び評論を掲載することができないものとすること。
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何人も、国民投票に影響を及ぼす目的をもって、新聞紙又は雑誌に対する編集その他経営上の特殊の地位を利用して、当該新聞紙又は雑誌に国民投票に関する報道及び評論を掲載し、又は掲載させることができないものとすること。
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放送事業者の虚偽報道等の禁止
日本放送協会又は一般放送事業者は、国民投票に関する報道及び評論において虚偽の事項を放送し、又は事実をゆがめて放送する等表現の自由を濫用して国民投票の公正を害してはならないものとすること。
第十二 罰則
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買収罪、国民投票の自由妨害罪、投票の秘密侵害罪、国民投票運動の規制違反の罪その他の罪に関し、必要な罰則の規定を置くものとすること。
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国外犯に対し、必要な罰則の規定を置くものとすること。
第十三 その他
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国民投票の執行に関する費用は、国庫の負担とするものとすること。
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この法律の執行に関し必要な事項は、政令で定めるものとすること。
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その他所要の規定を設けるものとすること。
第十四 附則
この法律は、 から施行するものとすること。
自治庁 憲法改正国民投票法案
1953年1月20日作成
◇第一章 総則
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(この法律の主旨)
日本国憲法の改正についての国民の承認の投票についてはこの法律の定めるところによる。(第一条)
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(国民投票の期日)
(1)国民投票は憲法改正が提案された日から三十五日以後九十日以内において内閣の定める期日に行う。
(2)前項の期間内に衆議院議員の総選挙または参議院議員の通常選挙が行われた場合において、国会がその選挙の際行うことを議決したときは国民投票はその選挙の期日に行う。(3)前項の議決は憲法改正の発議の際になされなければならない。
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(国民投票の期日等の告示)
内閣は国民投票の期日前二十五日(参議院議員の通常選挙の際行われる場合にあっては三十日)までに投票日の期日および憲法改正案を官報で告示しなければならない。(第四条)
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(投票区および開票区)
投票区および開票区は衆参両院議員選挙の選挙区および開票区による。(第六条)
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(投票権)
衆議院議員の選挙権を有する者は国民投票の投票権を有する。(第七条)
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(国民投票に関する事務の管理および監督)
(1)国民投票は中央選挙管理会が管理する。
(2)中央選挙管理会は国民投票に関する事務について都道府県の選挙管理委員会を指揮監督する。(第九条)
◇第二章 投票および開票
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(一人一票)
投票は一人一票に限る。(第十二条)
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(投票用紙の様式)
(1)投票用紙には憲法改正案を掲載しなければならない。
(2)投票用紙には憲法改正に対する賛成または反対の意思を表示する記号をつける欄を設けなければならない。(第十三条)
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(投票の方式)
(1)投票人は投票所において憲法改正に賛成するときは投票用紙の賛成欄に、憲法改正に反対するときは投票用紙の反対欄に自らの○の記号を記載して、投票箱に入れなければならない。
(2)投票用紙には、投票人の氏名を記載してはならない。(第十四条)
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(投票の効力)
左の投票は無効とする。(一)正規の用紙を用いないもの(二)○の記号以外の事項のみを記載したもの(三)○の記号の外、他事を記載したもの(四)○記号をいずれの欄にも記載したもの(五)○の記号を自ら記載したものでないもの(六)○の記号をいずれの欄に記載したかを確認し難いもの。(第二十条)
◇第三章 投票審査分会および投票審査会
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(投票審査分会)
投票審査分会は、都道府県ごとに都道府県庁または投票審査分会長の指定した場所で開く。(以下略)(第二十四条)
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(投票審査の結果の報告及び告示)
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投票審査長は(中略)調査を終えたときは、直ちに憲法改正に賛成の投票の数及び反対の投票の数、有効投票の総数の二分の一の数並びに憲法改正に賛成の投票の数が有効投票の総数の二分の一の数をこえる旨またはこえない旨、その他投票審査の次第を中央選挙管理会に報告しなければならない。
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中央選挙管理会は、前項の報告を受けたときは、直ちに憲法改正に賛成の投票の数が有効投票の総数の二分の一の数をこえる旨またはこえない旨を内閣及び衆議院議長に通知しなければならない。
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内閣は前項の通知を受けたときは直ちに憲法改正に賛成の投票の数が有効投票の総数の二分の一をこえる旨またはこえない旨を官報で告示しなければならない。(第二十九条)
◇第四章 訴訟
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(国民投票無効の訴訟)
(1)国民投票の結果に関し異議がある投票人は中央選挙管理会の委員長を被告として、第二十九条第三項の規定による告示のあった日から三十日以内に最高裁判所に訴を提起することができる。
(2)前項の期間は不変期間とする(第三十一条)
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(国民投票無効の判決)
前条の規定による訴訟においては、国民投票に関する規定に違反するため、国民投票の結果に異動を及ぼすおそれがあるときは、裁判所は国民投票の全部または一部の無効の判決をしなければならない。(第三十二条)
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(審判の順位)
第三十一条の規定による訴訟については、裁判所は、他の一切の訴訟に優先して速やかにその審理及び裁判をしなければならない。(第三十三条)
◇第五章 再投票及び更正決定
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(再投票および更正決定)
第三十一条の規定による訴訟の結果国民投票の全部または一部が無効となった場合においては(中略)更に国民投票を行わなければならない。(以下略)(第三十七条)
第六章 国民投票の結果の確定
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(国民投票の結果の確定)
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中央選挙管理会は、国民投票の結果が確定したときは、憲法改正に賛成の投票数が有効投票の総数の二分の一の数をこえる旨またはこえない旨を添えて、その旨を内閣に通知しなければならない。
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内閣は前項の通知を受けた場合において、憲法改正に賛成の投票の数が有効投票の総数の二分の一の数をこえるときは、憲法改正が日本国憲法第九十六条第一項の国民の承認を経た旨、こえないときは、憲法改正が国民の承認を経なかった旨を、官報で告示するとともに、衆議院議長に通知しなければならない。(3)内閣は前項の規定により、憲法改正が国民の承認を経た旨の告示をしたときは、直ちに当該憲法改正の公布の手続きをとらなければならない。(第三十条)
◇第七章 国民投票に関する周知(略)
◇第八章 国民投票に関する運動
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(特定公務員の運動の禁止)
左の各号に掲げる者は、在職中国民投票に関する運動をすることができない。
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中央選挙管理会の委員および中央選挙管理会の庶務に従事する自治庁の職員並びに選挙管理委員会の委員および職員
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裁判所
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検察官
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会計検査官
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公安委員会の委員
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警察官および警察吏員
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収税官吏および徴税の吏員
国民投票の投票管理者、開票管理者、投票審査分会長及び投票審査長は、在職中、その関係区域内において、国民投票に関する運動をすることができない。(第四十一条)
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(教育者の地位利用の運動の禁止)
教育者(学校教育法に規定する学校の長及び教員をいう)は幼児、児童、生徒及び学生で年齢満二十年未満のものに対する教育上の地位を利用して国民投票に関する運動をすることができない。(第四十二条)
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(未成年者使用の運動の禁止)
何人も、年齢満二十年未満の者を使用して国民投票に関する運動をすることができない。(第四十三条)
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(外国人等の運動および寄付の禁止)
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外国人、外国法人及び外国の団体は国民投票に関する運動をするととができない。
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前項に掲げる者は国民投票に関し、寄付(金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付及びその供与又は交付の約束をいう)又はその周旋若しくは勧誘をしてはならない。
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何人も、国民投票に関し、前項の寄付を受けてはならない。(4)第二項の規定に違反して寄付がなされたときは、その寄付に係る金銭又は物品の所有権は国庫に帰属するものとし、その保管者において国庫に納付の手続をとらなければならない。(第四十四条)
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(国民投票の運動と選挙運動)
第四条の規定による告示のあった日から国民投票の期日までの間において公職選挙法第三条に掲げる公職の候補者が行う国民投票に関する運動(当該公職の候補者と意思を通じて行うものを含む)は、当該公職の候補者の選挙運動とみなし、公職選挙法の規定を適用する。(第四十六条)
日本労働年鑑 第27集 1955年版より
(発行:1954年11月5日 編著:法政大学大原社会問題研究所 発行所:時事通信社)